『心を置いて飛んでゆく』
現在の舞台芸術界で最も注目されているジャンルの一つが現代サーカスである。コンセプト重視で身体性が希薄になってきたコンテンポラリー・ダンスに対して、強い身体性を保ったままアーティスティックな表現領域が広がっている。
残念ながら日本での認知は高くはない。その中でも独自の世界を着々と築いているのが目黒陽介率いる、ながめくらしつである。しかし本作は従来のジャグリングのように扱うボールやピンの数を増やして難易度を競うものではない。
たとえば冒頭、本来のジャグリングでは空中で操作するシガーボックスを、淡々と積み木のように並べていく二人。高く積み過ぎたものは、ただ倒れていく。
あるいはエアリエル(空中技)に使うようなリングも、人々は旋回するリングを避けながら移動するだけだ。リングを使った空中パフォーマンスが行われるのはだいぶ経ってからである。
目黒が意図しているのは、超絶技巧の腕比べ大会ではない。モノを動かすだけではなく、モノによって動かされる身体や、舞台上に存在する関係性を積み重ねているのだ。舞台芸術・総合芸術のひとつとしてジャグリングに挑戦している数少ないアーティストなのである。
2016
シアタートラム
製作(オンライン配信):国際交流基金 (JF) (https://www.jpf.go.jp/)
製作協力:一般社団法人EPAD (https://epad.terrada.co.jp/)
<公演情報>
演出・振付:目黒 陽介
出演:目黒陽介、森田智博、宮野 玲、長谷川愛実、谷口 界、長岡 岳大、中村愛由子、安岡あこ、鈴木 仁
演奏:坂本弘道、南方美智子、一樂誉志幸
音楽:坂本弘道
美術:カミイケタクヤ
舞台監督:横川奈保子
照明:山森栄治
音響:長柄篤弘
衣裳:田村香織(HAReGI)
演出助手:神庭広希
宣伝美術:わたなべひろこ
記録映像:関矢昌宏
制作:奥村優子
主催:ながめくらしつ
<広報文>
乗越たかお
<カンパニーウェブサイト>
http://nagamekurasitsu.com/
配信終了日:2027年1月18日